【ロンドンIDN=チャンパ・パテル】
東南アジアの人権状況は、新型コロナウィルス感染症(新型コロナ)の発生前から決して良くはなかった。民主主義と人権の価値を重んじるというASEAN諸国の建前に反して、自由のない民主主義国が増え、基本的な自由が危険にさらされてきた。東南アジアのほとんどの国々が、一部が植民地時代に端を発する圧政的な法律や、新たな弾圧立法を通じて、異議申し立てを犯罪化している。コロナ禍はこの傾向を強化している。
国際的な基準では、公衆衛生を理由にして人権に制限を加えるには明確な目的がなくてはならず、目的と均衡がとれ、非差別的で、時限的なものでなくてはならない。しかし、多くの東南アジア諸国が、時限がなく、広い解釈を許す曖昧な条項を持った緊急措置を通している。為政者たちは、通常のチェック・アンド・バランスの手続きを飛ばした緊急の権限をますます利用し、新しい措置の是非を検討する可能性を狭めている。